「肩が上がらない」
「腕を後ろに回すと痛い」
「五十肩と言われた」
40代〜50代のお客様からよく聞くお悩みです。
実際に施術をして肩の動きを確かめていくと、ある共通点が見えてくることがあります。
それは、鎖骨の動きがとても小さくなっているということです。
肩は「ひとつの関節」ではありません
多くの方は、「肩が痛い=腕のつけ根の関節が原因」と思っています。
もちろん、間違いではありません。
痛みが出ている場所としては、そこが一番わかりやすいからです。しかし解剖学的に見ると、いわゆる「肩」は、ひとつの関節だけでできているわけではありません。
少なくとも3つの骨とさらに肋骨という存在を見ていく必要があります。

上腕骨と肩甲骨による関節、肩甲骨と鎖骨による関節、鎖骨と胸骨による関節、そして肩甲骨が肋骨の上を滑る仕組み。これらすべてが連携しながら動くことで、私たちは腕を自由に使うことができます。
そのうち、普段はほとんど意識されないのですが、じつはとても重要な役割を果たしている骨があります。それが鎖骨です。
鎖骨は「肩と体幹をつなぐ骨」
鎖骨は首のつけ根から横に伸びている細長い骨です。
この骨は肩甲骨と体幹を直接つないでいる唯一の骨です。
腕を上げる、物を持つ、洗濯物を干す、バッグを肩にかける。
こうした何気ない日常動作の中で、鎖骨はほんのわずかですが上下や前後に動き、そしてわずかに回旋しています。
この「わずかな動き」があることで、肩や腕の負担は分散されて、無理なく動かすことができるのです。
姿勢のクセが、鎖骨の動きを止める
では、なぜ鎖骨が動きにくくなるのでしょうか。
その大きな原因のひとつが、長年の間に積み重なった姿勢のクセです。
スマホやパソコンを見ている時間が長くなると、無意識のうちに頭が前に出たりしていませんか。
さらに背中が丸くなり、胸が縮こまってしまい、気づかないうちに呼吸が浅くなっている。
このような状態は鎖骨は本来の動きを失い、捻じれて下がった位置で固まってしまいます。
授乳をしている女性であれば、赤ちゃんを抱っこしておっぱいを上げているときに無意識のうちに鎖骨は固定されてしまいます。鎖骨と肩甲骨は連動して動くため肩甲骨も自由に動けなくなり、肩全体の動きはどんどん制限されてしまいます。
動きのしわ寄せは「腕のつけ根」に集まる
本来、腕を上げる動きは、鎖骨と肩甲骨、上腕骨による関節が連動して行われます。
ところが鎖骨が動かなくなることで、その分の動きをどこかが過剰に動いて補わなければなりません。
多くの場合、その役割を押しつけられるのがいわゆる肩の関節(肩甲上腕関節)です。
結果として、そこに肩や腕の動きに伴う負担が集中し炎症や痛みが起こりやすくなります。
肩こりや五十肩という症状の背景には、こうした「動きの偏り」が隠れていることが少なくありません。
痛いところと、原因の場所は違う
治療の現場でよくお伝えしているのが、 「痛いところ=原因とは限らない」ということです。
肩が痛いのは、体からのサイン。肩そのものは一生懸命がんばっているだけです。
一つの例として、鎖骨の動きが制限されているために、肩に負担が集中しているケースがあります。
そして、マッサージなどで一時的にほぐして楽になっても、普段の姿勢に戻れば筋肉は元の状態に戻ろうとします。そしてまた、肩に負担がかかってしまう…。
だからこそ、鎖骨が自然に動ける姿勢、肩甲骨が安定する位置、呼吸が入りやすい肋骨の状態を取り戻すことが大切なのです。

実際に、当院では肩を強く揉んだり押したりしなくても、鎖骨まわりや胸郭、肩甲骨の位置を整えていくだけで、肩の動きが軽くなる方が多くいらっしゃいます。
自分でできる「鎖骨チェック」
肩の不調を見つける簡単セルフチェックをご紹介します。
このチェックで見るのは、鎖骨が「動いているか」「左右差がないか」「呼吸と連動しているか」です。
チェック① 鎖骨に触れてみる
まず、鏡の前に立つか、楽に座ります。
次に、片手で反対側の鎖骨にそっと触れてください。
鎖骨の内側(喉に近い部分)から外側(肩の先)まで、軽くなぞるように触れてみます。
このとき確認するポイントは、
・ゴツゴツせず、なめらかに触れるか
・左右で高さや硬さに差がないか
痛くなるまで押す必要はありません。触れて感触の違いがわかれば十分です。
チェック② 肩をすくめてみる
鎖骨に触れたまま、肩をすくめるように持ち上げ、ストンと力を抜きます。
このとき、鎖骨が一緒に少し上に動く感覚はありますか?
・肩だけが動いて、鎖骨が置いていかれる感じ
・片側だけ動きが悪い感じ
こうした違和感があれば、鎖骨の動きが制限されている可能性があります。
チェック③ 腕をゆっくり上げてみる
次に、反対の手で鎖骨に触れたまま、腕をゆっくり上げていきます。
肩より上まで上げる場合は、無理のない範囲で行います。
このとき、
・鎖骨がわずかに上に動くか
・途中で動きが止まる感じがないか
・左右でスムーズさが違わないか
を観察します。
腕が上がらないこと自体よりも、途中の引っかかりがないかがポイントです。
チェック④ 深呼吸との連動
最後に、鎖骨に触れたまま、ゆっくり鼻から息を吸い、口から吐きます。
息を深く吸ったときに、
・鎖骨がわずかに持ち上がる
・胸が広がる感覚がある
かどうかを感じてください。
もし呼吸をしても鎖骨がほとんど動かない場合は、姿勢や肋骨の制限が影響している可能性があります。
鎖骨チェックのまとめ
以下のような感覚があれば、鎖骨の動きが制限されている可能性があります。
これは異常ではなく、姿勢や体の使い方の結果であることがほとんどです。
この鎖骨チェックは、痛みを我慢して行うものではありません。
腕を動かすことにより強い痛みやしびれ、違和感が出る場合は無理に動かさず、医療機関に相談してください。
最後にあい治療院より
鎖骨は、自分では動いているかどうかがとても分かりにくい骨です。
だからこそ、意識して触れて確かめることで体の状態に気づけるようになります。
体はきちんとサインを出しています。
もし肩に不調を感じているなら「肩が悪い」と決めつける前に肩だけでなく、鎖骨の動きにも目を向けてみてください。そこに、改善の大きなヒントが隠れていることがあります。

