普段、私たちは意識して息を吸う、息を吐くということをほとんどしていません。
心臓がドキドキしている、ハーハーと息を吐くという状態は、例えば100メートルダッシュをしたあとに感じるくらいです。
もしこれが、ヨガや瞑想をしている方であれば、その時は「呼吸に意識を向けて」と言われて鼻から息を吸う、口から息を吐くなんてことをされていると思います。
それくらい「自然に」私たちは何気なく息を吸ったり吐いたりしています。
心臓も同じように、私たちは意識しなくても24時間365日ドキドキと動いてくれています。ありがたいですね。
そして、呼吸や心臓が止まってしまった時、それは寿命を終えたということになります。

この呼吸や心臓の働きは「自律神経」と呼ばれる神経系統によってコントロールされています。手足を動かすのと違って、自律神経を自分でコントロールするのは難しいと言われています。
手足なら、曲げたり伸ばしたり、できますよね。
心臓を早く動かして!とか、たぶんできません。
(インドのヨガの行者であれば、そういった訓練をしている人もいると聞きます)
ここからちょっと専門的になります。
普段、私たちが無意識にしている呼吸を「二次呼吸」と言います。
中学校の生物の時間に習った、酸素を吸収して、二酸化炭素を吐き出す、というあれです。
魚であればエラを使ってO2を吸収してCO2を吐き出しています。それをヒトは肺で行っています。
鼻から息を吸って、気管を通り、肺に酸素が届きます。
肺の細かい血管で酸素と二酸化炭素が交換される一連のサイクルを肺呼吸と言います。

肺呼吸=二次呼吸 なんです。
二次、っていうのは、二次予選みたいな使われ方をしますが、要は二番目のという意味です。
そう考えると「一次呼吸」ってあるの?という疑問が浮かびます。
…あるんです。
ヒトはどのタイミングから、肺で呼吸をするようになるでしょうか。
それは、お母さんのおなかから生まれ出た瞬間からです。
産道を通過して泉門が開閉し、まぶしい光を受けてこの世に命が生まれます。
胎児がおなかから出て、元気よく「オギャー」と鳴き声を上げます。
この瞬間が二次呼吸の始まりで、ヒトが二番目にする呼吸。
…ということはその前から始まっている呼吸があります。
正確に言えばO2とCO2のガス交換ではないので、呼吸に似た動きがあるというほうが相応しいです。
何が動いているかというと、脳脊髄液が流れている動き。
これが、一次呼吸と呼ばれるものの正体です。
お母さんのおなかのなかで胎児の心臓がドキドキと言っているように、脳脊髄液も胎児の時から脳と脊髄を包むように流れています。成人では、脳脊髄液が流れることで頭蓋骨と仙骨が「呼吸をしているように」一定のリズムで動いています。
この世に生まれる前から、動いている心臓と脳脊髄液。
そう考えると、とても神秘的ですね。
クラニオセイクラルセラピーでは、頭蓋骨と仙骨にコンタクトしてかすかな動きを感じます。そして、呼吸に意識を向けて、静かに脳脊髄液の流れを整えます。
そうすることで乱れた自律神経が鎮まり、生きるためのバランス(生体の恒常性)が保たれます。ザックリと言えば、そういう施術をするのがクラニオです。
ヒトが生まれる前から持っている「一次呼吸」が静かに整う。
呼吸が整うことで生きる力=自然治癒力を根っこからよみがえらせるアプローチです。
いずれも呼吸や心臓をつかさどっている自律神経が乱れている状態が考えられます。
一次呼吸を整えることは(自分では調整が困難な)自律神経が安定して、体のリズムを整えることにつながります。夜、眠れない方はもちろん、肩こりや腰痛もなく、どこも気にならない方でも一度、体験していただきたい施術です。
※医学的な言葉は一般的なわかりやすい表現に一部、言い換えています。ご了承ください。