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階段がつらくなる本当の理由

加齢とともに落ちる筋肉?

最近、階段を上るときに「よいしょ」と声が出るようになった。
以前より脚が重い
ふくらはぎが張りやすい
手すりを使う回数が増えた

50代半ばから60代にかけて、こうした変化を感じる方はとても多くなります。
多くの人は「筋力が落ちたから」と考えます。もちろん筋力も関係します。

けれど実は、それだけではありません。階段が辛くなる本当の理由は「ふくらはぎの使われ方」と「体の“予測力”が変わってくる」ことにあります。

まず、ふくらはぎの役割から理解しましょう

私たちは「ふくらはぎ=地面を蹴る筋肉」と思いがちです。
でも実際には、もっと重要な役目があります。

それは、体が前に倒れないように、ずっとブレーキをかけ続けているという役割です。
前回のブログでも冒頭に記しています。

階段を上るとき、足を段に置いた瞬間から体重は前方へ移動します。
このとき、すねの骨は自然に前へ傾こうとします。

もし何も制御されなければ、体はそのまま前に崩れてしまいます。
ここで働くのがふくらはぎです。
ふくらはぎは縮みながら力を出しているのではなく、引き伸ばされながら踏ん張るように働きます。
これは「遠心性収縮」と呼ばれる使い方で、ブレーキを踏みながら前へ進んでいる状態に近いものです。

階段を上っている最中、ふくらはぎはずっとこのブレーキ役を続けています。
そして体が十分に次の段に乗った最後の瞬間だけ、今度は縮みながら力を出して体を上へ押し上げます。これが一般にイメージされる「地面を蹴る」動きです。

つまりふくらはぎは、
・倒れないように支え続けて
・最後に地面を蹴り出す

という二段階の働きをしています。

ちょっと専門的に「予測して準備する仕組み」とは

ここまでは筋肉の話ですが、実はもっと大切なのが次の仕組みです。
私たちの体には
「これから動くことを先に予測して準備する」
という機能があります。

目的地を入力すると、最短ルートを検索するカーナビのような仕組みです。

専門的にはAPA(予測的姿勢調節)と呼ばれています。
階段を上ろうと決めた瞬間、脳はすでに
・どれくらい体が前に移動するか
・どれくらい上に持ち上げる必要があるか
・どの筋肉をどの順番で使うか …を瞬時に計算しています。

脳と体の連携って凄いですね!
そして足を段に置く前から、ふくらはぎやお尻、体幹の筋肉に、ほんのわずかな“予備の力”を入れ始めます。

これによって、体は倒れずにスムーズに動けるのです。
この「動く前に支える準備をしている」仕組みこそがAPAです。
若い頃は、この予測がとても自然に働いています。だから階段も無意識のうちに上れます。

50代半ばから起こること

ところが50代半ば頃から、このAPAの働き=バランス能力 が少しずつ弱くなってきます。
理由はいくつかあります。足裏の感覚が鈍くなったり、関節の動きが鈍くなったり、転びたくないという気持ちが強くなったりします。

すると体は予測して準備するよりも「固める」方向へ進みます。転ばないことを優先し始めるのです。
ふくらはぎもつねに緊張したままになり、ブレーキを緩められなくなります。

つまり、ふくらはぎはずっとブレーキを踏みっぱなしの状態になりがちです。

その結果、
・階段で足が出ない
・脚が重い
・ふくらはぎがすぐ張る
・一段ごとに止まりたくなる
…といった感覚が生まれてきます。

これは単なる筋力低下ではありません。
「体の予測」が弱くなっているサインです。
転びやすくなる人の多くは、つまずいたから転ぶのではありません。
動く前に準備できなかったから転びます。これがとても大切なポイントです。

バランス能力を維持するために

それでは、私たちはどうすればいいのでしょうか?答えは意外とシンプルです。
筋トレよりも必要なのは、予測する体を思い出させることです。

そのためにおすすめなのが、日常のなかでできる小さな3つの習慣です。

・段差でかかとをゆっくり下ろす動き
 急がず、3秒くらいかけて下ろします
 これはふくらはぎに「ブレーキの練習」をさせる動きです

・歯磨き中に片脚で立ってみるのもよい方法です
 少し揺れて構いません。揺れを感じることで、脳は再び予測の練習を始めます

・立ち上がる前や歩き出す前に、ふーっと息を吐くのも効果的です
 息を吐くと下腹部に力が入り、姿勢のバランスを取る準備が整います

大切なのは完璧にやろうとしないこと。
安全な環境のもとで、少し不安定になることを試してみてください。
体は失敗から学びます。揺れない生活を続けていると、予測する能力はどんどん眠ってしまいます。

山歩きや社交ダンスをおすすめします

50代はまだ十分に間に合う年代です。
この時期に体の予測機能を使い続けるかどうかで、10年後のバランス能力は大きく変わります。

ふくらはぎは単なる「地面を蹴る筋肉」ではありません。
あなたの体を支え続けている、大切なブレーキです。
そして階段は、そのブレーキと予測力を目覚めさせる身近なトレーニング場所にもなります。

具体的には、

・たまにはエスカレーターをやめて階段を上り下りしてみる
・舗装されていない公園を歩いたり、山歩きをしてみる
・ヒールのあるシューズを履いて社交ダンスを踊ってみる

このような動きを通して、自分のふくらはぎと準備する体に意識を向けてみてください。
きっと、今までとは違う感覚を感じられるはずです。

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